ICO(Initial Coin Offering)の法的位置付けおよび判断基準
私の修士論文は電子決済に関する法律問題を研究してい、その中には仮想通貨とICOについてのことも論じる。この前に日本でICOの法的位置付けおよび判断基準についてのレポートを書いた。2016年に改正した資金決済法は仮想通貨の問題を考えるか、仮想通貨から派生したICOのことを考えていながった。その故に、2017年9月に金融庁はICOについて勧告を発表し、ICOに関する法律が主に資金決済法と金融商品取引法に関わることを示した。しかし、具体的な適用方法を言及していない。この文章がICOの法的位置付けと判断基準を書いてみる。
最近因為一些事項針對日本在ICO的判斷上,寫了一篇關於ICO在目前日本法上的法律定位和議題分析,簡單講了一下在日本法制上面的判斷流程,因為還來不及把它譯成中文,所以先把日文丟上來。簡單說是討論ICO在日本上面的法定位還有相關牽連的法規,並且想了一套思考流程來幫助判斷,以下是日文版。中文版預計等比較有空再來翻譯,很抱歉。(上方日文並非本文的譯文)
一、 はじめに
日本では、情報通信技術の革新やインタネット等の普及に従って、2009年に資金決済に関する法律(以下「資金決済法」という)が成立され、それによって資金移動業者、前払式業者および資金清算業者という3つの決済に関する事業者が規制されている。また、最近ビットコインという仮想通貨は話題となっている。ブロックチェーンの技術を活用するので、ネットのグループと暗号技術だけを利用しても電子決済が可能になった。従来第三者が介入する電子決済は大きく変わってきた。このような仮想通貨の特徴を利用する通貨の国際移転が迅速と便利であるし、匿名利用も可能になったが、マネーロンダリングの手段として悪用される恐れもある。例えば、2014年に日本でMTGOX仮想通貨交換所が破たんした事件が起きて、多くの利用者が波及された。したがって、2016年にマネロンダリングの防止と利用者保護を目的に資金決済法が改正され、仮想通貨に関する規制がはじめて導入された。
その後、仮想通貨の発展に伴って2017年にICOという新たな資金調達手段が出現した。立法者はICOの発展を充分に意識していなかったので、現行の資金決済法にそれに関する明確な規制は存在しない。金融庁は同年10月27日に「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」と題する文書を公表し、ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となることを示していた[1]。しかし、具体的な適用方法を言及していない。そこで、ICOの仕組みとそれに関する法律要件を検討することが必要である。
[1] 金融庁,ICO(InitialCoinOffering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~,https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/06.pdf,(2018.07.20)。
二、 ICOとは
ICOはInitial Coin Offeringの略称であり、金融庁の定義によって、「一般に、ICOとは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称です。トークンセールと呼ばれることもあります。」[1]具体的に言えば、企業がトークンという独自の電子データを発行し、インターネット上でトークンを売り出し、その対価としてビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ether)等の仮想通貨の支払を受けることを通じて資金を調達する方法である。この仕組はインターネット上で群衆から資金調達をする「クラウドファンディング」[2]に類似するが、それと違うところは「仮想通貨」が支払いの対価として使われていることである。
[1] 金融庁,前掲注(1)。
[2] 増島雅和ほか編『FinTechの法律2017–2018』271–275頁(日経BP社,2017年)。
三、 ICOにおけるトークンの種類・性質
Initial Coin Offeringという表現でトークンは「Coin」と呼ばれるものの、実際にはより広い性質のものが想定されている。例えば、FINMAというスイス金融機関はトークンの種類を決済トークン(Payment token)、ユーティリティトークン(Utility token)および資産トークン(Asset token)の3種類に分類し、その性質に応じてそれぞれに規制している。決済トークンは決済手段として使われており、ユーティリティトークンはアプリケーションやサービスの権限として利用されている。資産トークンは実際物の所有権、株式や債券として取り扱われるトークンである[1]。また、トークンを仮想通貨型、会員権型、プリペイドカード型、ファンド持分型、アプリケーション・プラットフォーム型の5種類に分類している説もある[2]。様々な種のトークンは存在するので、発行されるトークンの種類と性質を定義することはICOを規制する前提となっている。
日本仮想通貨事業者協会が公表した「ICO対応指針」[3]により、ICOに関する法律は主に金融商品取引法(以下「金商法」という)、資金決済法における仮想通貨交換業および前払式支払手段発行業に関する規制がある。トークンの種類と性質を明らかにするために、次からそれぞれに検討する。
[1] Swiss Financial Market Supervisory Authority (FINMA), FINMA publishes ICO guidelines, Feb.16, 2018, available at https://www.finma.ch/en/news/2018/02/20180216-mm-ico-wegleitung/(last visited on Jul. 20,2018).
[2] 戸塚貴晴ほか,Initial Coin Offering について,2017年9月,https://www.amt-law.com/pdf/bulletins2_pdf/170915.pdf
[3] 日本仮想通貨事業者協会(JCBA)、イニシャル・コイン・オファリングへの対応について,2017年12月8日,https://cryptocurrency-association.org/cms2017/wp-content/uploads/2017/12/20171208_01.pdf,(2018.07.20)。
四、 集団投資スキームの概念
集団投資スキーム持分とは、民法上の組合、商法上の匿名組合契約、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、社団法人の社員権、その他の権利であり、出資した金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む)を充てて行う事業から生ずる収益の配当・財産の分配を受けることができる権利をいう[1]。一般的にはいわゆるファンドである。これらは金商法に「有価証券」として扱われ、その募集や運用において許認可が必要である[2]。
したがって、 ICO で集めた資金を用いて何らかの事業に投資を行い、その投資対象から生じる収益等をトークン保有者に分配する場合、トークンは有価証券に該当すると考えられる。しかし、ICO を行う際に常に仮想通貨を募り、金銭等の出資又は拠出がなく、形式的には「集団投資スキーム持分」に該当しないと言われる。もっとも、上述した金融庁の公表によって「ICOが投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となる」。それ故、金銭以外の形式でICOを行うとは言え、実際には金銭を集めている場合に金商法の規制を適用する可能性もある。
[1] 近藤光男ほか『金融商品取引法入門』42頁(商事法務,第4版,2015年);金融商品取引法2条2項5号。
[2] 第二種金融商品取引業(金融商品取引法2条8項7号ヘ、28条2項1号)及び投資運用業(金融商品取引法2条8項15号ハ、28 条4項3号)。
五、 資金決済法における業務の概念
1. 前払式支払業
前払式支払業とは、利用者にあらかじめに金銭などの財産を支払ってもらい、その金額に対する証票等を発行することを営む事業をいう。事前に購入した証票などは発行者からの商品やサービスの対価として使用することができる。その証票はいわゆる「前払式支払手段」であり、その要件は3つがある[1]。
(1) 金額または数量が記載・記録されていること(価値の保存)
(2) 金額・数量に応ずる対価を得て発行されること(対価性)
(3) 代金の支払いなどに使用できること(権利行使)
したがって、ICO企業は預かった資金や仮想通貨の価値に応じて商品やサービスを提供するトークンを発行すれば、上記要件に該当し得ることになり、前払式支払業の規制を遵守しなければならない。ただし、発行者からの商品やサービスの使用でトークンの財産的価値が減少しないなら、このトークンは財産的価値を保存しておらず、あるいは保存された財産的価値に結んでいないと言える。この場合に(3)の要件を満たさないと考えられる[2]。
2. 資金移動業
資金移動業とは、銀行等以外の者が少額の為替取引(100万円以下)を行う事業を営む事業者という[3]。インベンションの促進とインタネットでの送金需要を応じるため、従来銀行のみしか取り扱うことができなかった「為替取引」を銀行以外の業者に開放し、様々決済サービスを提供するように、資金移動業は創設された。仮想通貨は隔地の移転の便利性から考えると、仮想通貨を移動することは為替取引に該当するかどうかが問題となる。
平成13年3月12日最高裁判所第三小法廷の判例により、為替取引の意義は、「顧客から,隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて,これを引き受けること,又はこれを引き受けて遂行することをいうと解するのが相当である」とされている。
ここでいう「資金」は、金銭および容易に金銭に替えるものを指し、一般的には預金や外国通貨はこれに該当すると考えられる[4]。しかし、現在仮想通貨の価値が容易に変動し、固定の金額に換金されるのは難しいので、容易に換金とは言えない、資金に該当しかねる。また、ビットコインという仮想通貨は一定の財産価値を持っている電子データであり、この電子データをそのまま移転しても、為替取引の定義に該当するわけではないと考えられる。ただし、仮想通貨を送金手段として一定の仕組みを構築するものであれば、為替取引の定義に該当する可能性があると考えられる[5]。というわけで、仮想通貨を移動することが為替取引に該当するわけではない、実際のスキームを検討して判断しなければならない。
したがって、 ICO によって発行されるトークンが為替取引の手段として使用することにすれば、その発行者が資金移動業者に登録しなければならない。
3. 仮想通貨交換業
仮想通貨交換業とは、仮想通貨の売買、交換、それらの媒介、財産管理などを業として行う業者である。資金決済法による仮想通貨の定義は2種類あり、第1種類の要件[6]は次に掲げる。
(1) 財産的価値が電子的方法により記録され、通貨建資産[7]ではない
(2) 物品の購入・借受・役務提供の代価の弁済のために不特定の者に対して使用できる
(3) 不特定の者を相手方として購入および売却を行うことができる
(4) 電子情報処理組織を用いて移転することができる
(1)の要件により、仮想通貨は電子的性質を有し、その財産的価値が認められ、法定通貨で計算された資産ではない。仮想通貨が法償通貨ではなく、一定の財産価値を持っている支払い手段であることが分かった。また、通貨建資産の定義により、預金、債権と企業が発行する電子マネーなどは仮想通貨に該当しない。
次に、(2)と(3)の要件は仮想通貨の「使用範囲」と「流通範囲」を定義し、その中に「不特定」という概念に関する解釈が重要である。使用範囲と流通範囲が限定されて「不特定」の要件を満たさない物は、仮想通貨にはならない。例えば、前払式支払い手段とゲーム内通貨の使用は、一般的発行者または発行者が指定した者に限定されているため、「不特定の者を相手方として」という要件に満たさないと考えられる。
最後に、(4)の要件は、ブロックチェーン技術の抽象的な定義である。この要件を満たす仮想通貨はビットコイン、ライトコイン(Litecoin)などが挙げられる。
仮想通貨の第2種類は、以下のように定義されている[8]。
(1) 不特定の者を相手方として交換できる
(2) 第1種類の仮想通貨と交換することができる財産的価値であること
(3) 電子情報処理組織を用いて移転することができる
この定義による仮想通貨は、法定通貨で直接に買えずに第1種類の仮想通貨と交換できるアルトコイン(Altcoin)をいう。流動性のやや低いアルトコインは第1種類仮想通貨と交換することを通じて流通範囲が広くなれば、第1種類仮想通貨と同じように仮想通貨に関する法律に規制されるべきである。また、第2種類仮想通貨の財産的価値はやや狭い範囲内で解釈される必要がある。なぜなら、解釈が広すぎると、将来的には問題が生じる恐れがあるためである。例えば、電子マネー、ゲーム内での魔法石、株式、オンライン証券(通貨建資産)などをビットコインで売買できるようになった場合、広く解釈すると全部が第2種類の仮想通貨になる。それを防止するために、第1種類の仮想通貨と同じように解釈しなければならない。「不特定な人に使える且つ通貨建資産でないこと」という解釈はそれに適切だと思われる。
したがって、ICO によって発行されるトークンが仮想通貨に該当すれば、その発行者は仮想通貨交換業に登録しなければならない。
[1] 高橋康文ほか編『逐条解説 資金決済法』65–66頁(金融財政事情研究会,2009年) 。
[2] 堀天子『実務解説資金決済法』25頁(商事法務,第3版,2017年)。
[3] 資金決済に関する法律第2条2項、第2条3項、第37条;資金決済に関する法律施行令第2条。
[4] 吉国一郎ほか編『法令用語辞典』339頁(学陽書房,2009年)。
[5] 堀・前掲注(10)45頁。
[6] 資金決済に関する法律第2条5項1号:「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。」
[7] 資金決済に関する法律第2条6項:「この法律において『通貨建資産』とは、本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され、又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるものが行われることとされている資産をいう。この場合において、通貨建資産をもって債務の履行等が行われることとされている資産は、通貨建資産とみなす。」
[8] 資金決済に関する法律第2条5項2号:「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。」
六、 ICOに関する法律適用
ICOに関する法律適用の問題を解決するために、トークンの性質を判断することが極めて重要であり、トークン性質に基づいてICOの法的位置付けを明らかにできる。上述した規制の要件を踏まえて、「収益性」、「通貨建資産」、「使用範囲」および「流通範囲」という順序でトークンの性質に関する判断基準を分析してみる。
まず、集団投資スキームの要件について、ICOを通じてトークンの持ち分比率に応じて利益を分配するかを考える。利益が分配される場合、金融商品取引法での適用を検討すべきである。例えば、Ethereum上のスマートコントラクトスキームであるThe DAOから発行されるトークンが米国証券取引委員会(SEC)に有価証券と認定された[1]。
分配されない場合、次に仮想通貨の要件における「通貨建資産」に当てはまるかを考える。トークンは法定通貨または外国通貨で計算された通貨建資産であれば、前払式支払手段への該当性や為替取引への該当性を検討する。例えば、円にリンクするMUFGコイン[2]は通貨建資産、仮想通貨に当てはまらない。
最後に、トークンが通貨建資産でないと判断する場合、その「使用範囲」と「流通範囲」を分析し、不特定な対象に使用または交換できるかを確認する。それに関して制限があれば、前払式支払手段への該当性や為替取引への該当性を検討する。制限されない場合、仮想通貨への該当性を検討する。例えば、イーサリアム(Ethereum)・プロジェクト[3]が発行したイーサ(Ether)は仮想通貨になる可能性が高い。
以上の分析方法と順番に沿ってトークンの性質を明らかにして、ICOが日本でどのような法律を適用すべきかを判断しやすくなると考えられる。
[1] United States Securities and Exchange Commission (SEC), Report of Investigation Pursuant to Section 21(a) of the Securities Exchange Act of 1934: The DAO, Jul. 25, 2017 available at https://www.sec.gov/litigation/investreport/34-81207.pdf(last visited on Jul. 20,2018).
[2] Coin Choice,三菱UFJ銀行、独自仮想通貨「MUFGコイン」の実用テスト実施へ,2018年5月30日https://coinchoice.net/mufg-bank-testing-cryptocurrency/,(2018.07.20)。
[3] Ethereum, https://www.ethereum.org/(last visited on Jul. 20,2018).
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